okobira-Lab

研究内容Research

研究コンセプトConcept

 大河平研究室では、様々な技術・知識を融合しながら機能性材料を創製する研 究を行っています。
concept


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電子線グラフト重合Radiation-induced graft polymerization

 本研究室では『電子線グラフ ト重合法』という高分子重合法を利用し、 高分子基材に様々な機能を付与する研究を 行っています。 電子線グラフト重合法では、ポリエチレンのような一般的な材料にモノマーを接触させることで『ポリマーブラシ』を生成することが可能です。
graft
 例えば、モノーとし て反応性の高いエポキシ環を分子内に有するグリシジルメタクリレートを重合した場合、エポキシ環を多数有するポリマーブラシを基材に生成することが出来ます。その エポキシ環に種々の官能基を導入することで、基材に新しい機能を付与することができます。

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抗体積層固定化ポリマーブラシPolymer brush with multilayer immobilized antibody

 新型コロナウイルスのパンデミック発生により、ウイルスを捕捉・濃縮するための技 術の需要が高まっています。例えば、インフルエンザや妊娠検査簡 易診断キットとして有名なイムノクロマトは、抗原・抗体反応利用した 検査法であり、世の中に広く普及しています。一方で、新 型コロナウイルスに関しては、感度が不十分であり、風邪等の症状発生後 すぐに検査しても陽性にならないケースが見受 けられます。また新型コロナウイルスは不顕性感染 (感染していても無症状である状態)を引き起こすことが知られており主に発熱等の風邪の症状を発している有症者のみを対 象とする臨床検査では、真の流行状況を把握すること困 難と言われています。
 そこで、下水中に微量存在するコロナウイルスのRNA濃度を測定 し、地域の蔓延状況や感染者の推移予測が可能できる「下水道サーベイランス」の重要性が認識され、様々 な検証が行われているところです。この下水道サーベイランスは、まず試験区域で下水を採取し、何らかの 方法でウイルスを濃縮した後、RNAを抽出して測定を行う、という工程になります。この濃縮の工程には 課題があり、新しいウイルス濃縮技術・材料の開発が急務とされています。
 そこで本研究室では、電子線グラフト重合法
により適切な官能基を導入することで、ポリマーブラシに抗体を固定化する研究を進めています
。従来の 抗体固定化材料は、基材の表面に単層で抗体が固定化され、その抗体がウイ ルスを捕捉ます。一方で、本研究室で開発している材 料では、ポリマーブラシに抗体を積層固定可能であるため、従来のもの よりも単位面積あたりのウイルス捕捉量が高いという特徴を有します。


 さらに、ポリマーブラシに異なる抗体を固定化することで、同一基材内で異なるウイルスを捕捉することが可能になります。つまり、検体等に含まれる複数種のウイルスを一斉に濃縮することが可能になるため、「どのウイルスが」「どのぐらい」存 在するかを一度で解析することが可能になります。これマルチプレックス解析』と呼びます。

multiplex 
 現在は抗体固定化の基礎技術確立およびその評価に取り組ん でいるところですが、将来的には、特定のウイルスの存在を簡単に目視で判別できるようなキットを開発したいと考え ています。
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有機媒体中における高活性な酵素反応の実現Enzyme

 私達の生体内で様々な反応を 行っている酵素は基質特異性を持ち、決まった物質のみを生産することが可能であることから、各分野における工業 利用に向けた多くの研究が行われています。例えば、加水分解酵素であるリパーゼは、オレイン酸などの脂肪酸をエ ステル化する機能を有していることから、植物油や廃油などからバイオディーゼル燃料を生成することが可能です。 しかし、多くの酵素は有機媒体中では変性して失活してしまいます。
 本研究室では、ポリマーブラシに酵素を有機媒体から保護できる『水分子を保持することが可能な官能基』を導入し、酵素周辺に配置することで酵素活性を維 持するという手法について検討しています。さらに、官能基の荷電反発によってポリマーブラシが伸びることから 『酵素の積層化』が可能となり、従来の酵素固定化材料よりも高活性な材料の開発が期待できます。

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有用・有害物質の回収除去材料の開発Recovery, Removal

 私達の生活が便利になる一方で、環境汚 染や資源の枯渇が全世界で問題となっています。特に日本は資源が少ないため、多くの有用物質は輸入に頼っているのが現状 です。例えば、携帯電話に代表される家電製品に多く利用されているレアメタルや、工業利用されている金属は高価なものが 多いため、再利用を目的とした回収技術が求められています。現状で は、凝集沈殿法や溶媒抽出法が主流ですが、これらは多くの有機溶媒を用いることから、コスト面・環境面から考えると必ず しも適切とはいえません。そこで本研究室では、ターゲットを高速・高効率に回収除去可能な材料の開発を行っています。こ の研究では『電子線グラフト重合法』で基材にポリマーブラシを生成し、そのポリマーブラシに『ターゲットを捕捉可能な官 能基』を導入することで高効率化を検討しています。この官能基の分子設計には『計算化学的手法』を用いており、『実験と 理論の融合』による多面的なアプローチによる検討を行っています。
                                                                                                    
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計算化学的手法による溶液中の高分子構造の可視化Computational Chemistry

 分子の構造を解析する手法は様々ですが、多くの分析機器による解析 は『溶液中の構造をきちん と反映できていない』『スケールが大きすぎる(ナノメートルオーダー)』といった問題点が挙げられます。実際に高分子の構造や機能をきちんと把握するため には、『溶液中の挙動をオングストロームオーダー』で解析する必要があります。これは非常に難しく、現在の分析機器 では不可能に近いかもしれません。例えば、単分子の結晶構造を解析するために『X線回折』が利用されていますが、結 晶化しにくい高分子では非常に困難です。また、溶液中の高分子の大きさを解析 可能な『小角X線散乱 (SAXS)』がありますが、詳細な構造解析(各分子の向き等)は困難です。しかし、SAXSでは分子の大きさと形状によって出現するスペクトルのパター ンが異なるため、『高分子の大体の大きさと形状』を予想することができます。そこで本研究では、この『SAXSから 得られた解析結果から高分子の大きさと形状を予想』し、『計算化学的手法による可視化』を検討しています。


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小さな泡のちからFine Bubble

 一般的に『気泡』として認識されているものはcm~mmオーダーの ものですが、中には直径が μm〜nmオーダーの小さな気泡も存在します。この直径が100 μm以下の気泡はファインバブルと呼ばれています。 このファインバブルは、気泡の直径のサイズにより呼び方が異なり、直径が1〜100μmのものを『マイクロバブル (MB)』、直径が1μm以下のもの (nmオーダー)を『ウルトラファインバブル(UFB)』と定義されています。このMBやUFBは、気泡内部の面白い現象が発見されて以来、日本発の技術 として注目されています。例えば、酸素ガスをバブリングすることで水中の溶存酸素濃度が向上し、魚の生存量が劇的に 改善されることから水産業への応用が展開されています。他にも、オゾンガスをバブリングすることで殺菌効果を高めた り、気泡内部に疎水性物質を閉じ込めたりすることもできることから、食品工業、化学工業などへの応用が期待されてい ま す。本研究室では、このMBやUFBの基礎物性を調べ、この面白い泡の機能を様々な分野へ応用するべく研究を行って います。
                                                                                                     ページトップへ戻る

有機配位子が金属と作る構造体Metal-Organic Frameworks

 有機配位子と金属イオンが連続的に架橋することで規則的なフレーム 構造が構築されることが発見され、ナノ空間を有効利用するうえで盛んに研究が行われています。このフレーム構造 (MOF)の面白いところは、さまざまな有機配位子と金属イオンの組み合わせにより、無限大の設計が可能である点です。本研究室では、 MOFのユニークな構造から発現される機能性についてや、様々な外部刺激によってMOFの構造を制御する研究を行っ ています。
mof

                                                                                                     ページトップへ戻る